チタンは優れた特性を持つ金属で、軽量でありながら高強度と耐食性に優れています。 航空宇宙から一般産業まで多様な分野で利用されており、その性能から他金属と比較して加工が比較的難しいです。
チタンに他の添加金属によって強化されたチタン合金は、機械的強度が求められる場面で使用されます。
チタンの加工方法を選ぶ際の「形状」や「使用用途」に合った注意点や考慮した具体的な加工方法と注意点について解説していきます。
①チタン加工について
チタンの持つ優れた特性から、広範囲にわたる産業分野でニーズが高まっている金属です。しかしその特性ゆえに機械加工が難しいと言われています。その難しさもチタンの種類、形状や用途に応じて適切な工程や注意点を把握し、適切な加工を行う事でご希望の使用用途に適した部品を調達する事ができます。
それでは様々なチタン加工をご紹介していきます。
加工①切削加工(せっさくかこう)
- マシニング加工
- 旋盤加工
- 複合加工(マシニング+旋盤)
- 複合加工(旋盤+マシニング)
マシニング加工…製品のサイズや精度を考慮して3軸加工機から5軸加工機まで、適した機械での加工を行います。高精度な加工もお任せください。
旋盤加工…単純な丸形状の部品から、大型部品はφ250(長さ360)まで実績多数あります。
複合加工(マシニング+旋盤)…マシニング加工機に旋回機能を付けての加工。マシニングが主体となった複合加工が可能となります。
複合加工(旋盤+マシニング)…旋盤加工機にマシニング機能を付けての加工。単純な丸物加工に「Dカット」や「横穴」などをワンチャックで加工可能。
加工②切断加工(せつだんかこう)
- ワイヤーカット加工
- シャーリング加工
- レーザーカット加工
ワイヤーカット加工…チタン材に対して電極であるワイヤー線を通電させて切断する加工です。
複雑形状部品の一部のみを加工する事したり、薄い板形状部品を複数枚を重ねて加工する事ができます。(ワイヤーカット加工を詳しく)
シャーリング加工…板状の材料を切断する加工方法です。上刃と下刃によるせん断力を材料にかけることで切断する一般的な”はさみ”の原理に似ており、主に定尺の材料から必要なサイズの切り板を作るために使用されます。
レーザーカット加工…レーザー光を金属に当てて切断する方法で、板金加工を営んでいる加工業者が持ち合わせている事が多い。
加工③曲げ加工
チタンの曲げ加工は、強い弾性とスプリングバック現象に注意が必要です。加工の際には圧力や角度を材料の特性と寸法に合わせて調整する必要があります。
②チタン材の種類
チタンの種類は大きく分けて「純チタン」と「64チタン」に分かれます。
純チタン
純チタンは「1種」「2種」「3種」「4種」の4種類があり、チタン2種が流通性などを考慮して、最も一般的な材質となります。当社で取り扱う純チタンも大半がチタン2種です。
チタン1種は「柔らかく、純度が高い」のに対して4種に近づくにつれて「硬く、純度が低く」なります。
64チタン(Ti-6Al-4v)
64チタンは上記の通り、純チタンと比較して強度を始めとした機械的性質が高く、航空・宇宙関連の部品に使用されることが多い。また純チタンと比較して材料費も高額になる為、特段の目的が無い場合は純チタン2種を採用される事が多いです。
③チタンのメリット・デメリット
メリット
- 軽い
チタンは比重(4.43)と鉄(8.9)やステンレス(7.6)と比較するととても軽い。
(軽量金属であるマグネシウムやアルミと比較すると勿論重い) - 高温の環境下での使用が可能
チタンは約500℃の高温まで機械的性質を保つことが出来る - 耐食性が高い
チタンは、特に海水との接触において非常に耐食性が高い金属です。この耐食性は、チタンの表面に形成される酸化チタンの強固な皮膜によるもので、特に塩素イオンに対して優れた防御を提供しステンレス鋼と比較しても、海水中の耐食性はチタンの方が優れています。
- 生体親和性が高い
チタン合金は毒性がなく、金属アレルギーを起こしにくい金属である為、インプラントなど人体の内部に直接使用されている事が多い
デメリット
- 材料が高額
目安単価10,000円/kg以上と高価な材料である
- 切削加工が難しい
・強度が高く、工具が消耗しやすく破損しやすい
・加工時、熱伝導率が低いため刃物に熱がたまりやすい
・発火リスクが他金属より高く、慎重な管理が必要 - 材料に「粘り気」がある
サクサクと削れるアルミ等と比較して「粘っこい」材料の為、複数の工程に分けて加工を行う事が多いです。 - 変形しやすい
ヤング率が低い為、変形しやすい
ヤング率 | |
チタン | 113GPa |
ステンレス | 200GPa |
鉄 | 206GPa |
④チタン加工の注意点
チタンは耐食性、耐熱性、そして比強度に優れた素材ですが、これらの特性が切削工具の寿命を短くする原因となり、そのためにチタンは難削材とされます。
- 熱伝導率が低く、強度が高いため、切削時に発生した熱が工具に蓄積されて、工具の摩耗が激しくなり工具の寿命が短くなります。
- ヤング率が低くしなりやすい為、加工時に変形しやすい。寸法精度の厳しい部品を加工する際には注意する必要がある。
- マグネシウム同様に加工時に発火するリスクがある為、チタン加工時のノウハウと加工時の慎重な管理が必要。
⑤まとめ
チタンは材料費と加工費は安くありませんが、優れた特性を持ちます。医療関係部品から航空宇宙関係部品など幅広い業界で使用される「チタン」を「鉄やステンレス」の代替材として検討してみてはいかがでしょうか。
セキダイ工業ではチタンを始めとした各種金属の切削加工も多数実績がございます。お気軽にお問い合わせください。