表面処理や熱処理など、加工前後に行う処理に関連する用語を説明しています
アニール処理
焼鈍を参照のこと。アニーリングとも呼ばれる。
アニオン(電着)塗装
カチオン塗装と電極が逆で、水溶性塗料(陰極)を溶かした槽に製品(陽極)を浸漬させ、電気の力を使って塗膜を形成させる塗装。被塗物が複雑な形状であっても均一で密着性の高い塗膜が形成されるる。カチオン塗装に比べると防食性が低い。治具に吊るして浸漬するため、その部分には塗膜が着かない。主にアルミ素材(鉄も可)の塗装に用いられる。アクリル樹脂主体の塗料を用いるため、カチオン塗装が灰色、黒色だけなのに対して、豊富な色のバリエーションがある。
アルマイト処理
表面処理の一つ。アルミニウムに対して行う被膜処理であり、シュウ酸などの電解液中でアルミに電気を流して、耐食性酸化被膜をつけること。素材を意図的に酸化させ、被膜を形成する。通電して行うため、接点(アルマイト接点)が必要となり、その箇所には処理はのらない。当社では、各種カラーアルマイト、軟質アルマイト、硬質アルマイト、梨地アルマイトなど様々なアルマイト処理を含んだ一貫対応が可能となる。
アロジン処理(化成処理)
アルミに行う化成処理(クロメート処理)の一種であり、6価クロム含有のため、RoHS指令に対応していない。日本パーカライジング社の商標。
化成処理
素材表面に処理剤を作用させることで化学反応を起こし、硫化物や酸化物の被膜を形成させる処理。耐食性や塗料との密着性向上などの目的で行われる。また、陽極酸化被膜処理では失われてしまう導電性が保持できることも特徴の一つ。種別としては、ノンクロム系化成処理(黒染め、ジルコン処理、リン酸塩処理[パーカー処理])とクロメート処理(3価クロム系化成処理[ベルスクード処理、他]、アロジン処理、クロメート処理[6価])に分けられる。
カチオン(電着)塗装
水溶性塗料(陽極)を溶かした槽に製品(陰極)を浸漬させ、電気の力を使って塗膜を形成させる塗装。被塗物が複雑な形状であっても均一で密着性の高い塗膜が形成されるため防錆力が高く、自動車部品を中心に用いられる。治具に吊るして浸漬するため、その部分には塗膜が着かない。主に鉄素材の塗装に用いられる。基本的な色調は黒色か灰色となる。主に量産車に用いられる塗装のため、試作での膜厚の調整は基本的にできない。膜厚は10~20μmで、協力会社での対応が可能。
黒染め処理(化成処理)
鉄鋼、ステンレス、銅に行う化成処理の一つ。高温で濃度の濃いアルカリ溶液を煮沸し、鉄の表面に四三酸化鉄の皮膜を覆う。膜厚は1~2μmのため、厳しい寸法精度が求められる部品にも適用しやすい。部品使用時には、被膜自体に防錆の効果はあるが、主に被膜の上に防錆油を塗布して使用することが一般的。四三酸化鉄被膜処理、四酸化鉄処理、フェルマイト、黒色酸化鉄処理、アルカリ着色処理、Fe304、Black oxideとも呼ばれる。
クロメート処理(化成処理)
鉄鋼素材、アルミニウム、マグネシウムに行う化成処理の一つで、リン酸塩処理(パーカー処理)と並ぶ、化成処理の最も代表的な処理方法である。6価クロムを含む溶液に浸漬し、表面を皮膜で覆う。基本的には6価クロム含有の処理をクロメート処理という。RoHS指令に対応していないため、主流は3価クロム系化成処理になりつつある。また、広義では、アルミに行う3価クロメート処理である「ベルスクード処理」なども含む。
硬質アルマイト処理
主に自動車のエンジン部品などの摺動部に積極的に用いられる耐摩耗性に優れた硬い性質のアルマイト処理。軟質(普通)アルマイトに比べ、染色しづらい。硬度400HV以上 膜厚10~70μm程度。
ジオメット®(化成処理)
ダクロダイズド処理のクロムフリー代替品として、NOFメタルコーティングス(旧 日本ダクロシャムロック社)が開発した、環境対応型水系完全クロムフリーメッキ。ジオメット®720が確立されており、通常膜厚は8μm。
シボ塗装
塗装の表面に模様が付いている塗装のこと。カメラのボディなどに用いられる。当社の協力会社で対応が可能。
ダイクロメート処理(化成処理)
マグネシウム合金に行うクロメート処理(化成処理)のこと。MIL-M-3171, AMS-2475に準じ、航空エンジン部品でよく使用されている名称の模様。MX処理(化成処理)もこちらに属する。
タフラム®処理(テフロン硬質アルマイト)
硬質アルマイト表面の微細凹凸にフッ素樹脂を含ませた表面処理。元々宇宙開発人工衛星等の部品への使用を目的に米国のGENERAL MAGNAPLATE CORP.社が開発し、商標登録している。日本国内ではアルバックテクノ株式会社が日本国内で唯一ライセンス生産をしている。アルミ全般に処理は可能だが、寸法管理や品質の面からA5052、A6061への処理が推奨されている。「テフロン硬質アルマイト」が相当処理になる。
テフロン(フッ素樹脂)コーティング
フッ素樹脂の塗膜を付着させるコーティングのこと。非粘着性、耐熱・耐寒性、すべり特性、電気特性、耐摩耗性、耐薬品性、耐蝕性、非濡性などの物性を付与することができる。精密加工の分野では膜厚は20μm~50μm程度が一般的。また「テフロン™」は米国ケマーズ社(旧デュポン社)の商標。PTFE,PFA,FEP,ETFEの種類がある。PTFEが最も汎用性が高い。PTFE及びPFA,FEPは協力会社での対応が可能。
電着塗装
電着塗料が入った槽の中に、被塗物と電極を入れ、片方を陽極、反対側を陰極にすることにより電位を生じさせ、塗膜成分を電気泳動させる事により被塗物の表面に塗膜を析出させる方法。カチオン電着塗装(被塗物が陰極)、アニオン電着塗装(被塗物が陽極)の種類がある。ELECTRO COATINGまたは、ELECTRO DEPOSITION COATING等といわれ、一般にEDと呼ばれており、図面上には最も一般的な「カチオン電着塗装」表記以外に「カチオンED」等と指示されることもある。
軟質(普通)アルマイト処理
表面処理の一つ。建材、家庭用品、装飾品、工業製品全般に用いられる一般的なアルマイト処理。硬度200HV程度 膜厚5~25μm。
ノンクロム系化成処理
ヨーロッパのRoHS指令等で規制されている六価クロムを全く含んでいない化成処理。クロムの代替としてジルコンを使用することからジルコン処理とも呼ばれる。主にマグネシウムとアルミニウムに対して、耐食性向上、塗装の前処理として用いる。被膜厚さ1μm程度。皮膜自体は無色透明であるが、前処理のエッチングの影響でマグネシウムでは黒味がかったくすんだような色合いに、アルミニウムでは白っぽくなる傾向がある。
バッカル(VACAL®)処理(アルマイト)
真空装置用の特殊アルマイトのこと。陽極酸化被膜上のクラックを極限まで抑えたアルマイト。アルバックテクノ㈱の登録商標。
パッシベート処理
パッシべート処理とは、ステンレスの防錆処理の一種。ステンレスはもともと表面が酸化皮膜により覆われているため、一般的には錆びにくい材質として知られているが、この皮膜は非常に薄く、何らかの外的要因により錆が発生する場合がある。そこで防錆性能を向上させるために行うのがパッシベート処理である。硝酸系の酸化剤でクロム濃度を高める硝酸浸漬法、電解研磨によって金属の表面を溶かしステンレス表面の微細な傷や汚れを除去し表面を滑らかにさせることで均一な皮膜の形成処理をする電解研磨法の種類がある。不動態化処理とも呼ばれる。
パーカー処理
リン酸塩被膜処理参照のこと。
不動態化処理
パッシベート処理参照のこと。
メッキ(鍍金)
基材(個体)表面に金属の薄膜を被覆する表面処理の一つ。装飾、防食、機能付与(耐摩耗性、導電性など)のために用いられる。大別すると電気メッキ、無電解メッキの二種類がある。亜鉛メッキ、ユニクロメッキ、ニッケルメッキ、金メッキなどの目的別に種類が豊富にある。
陽極酸化皮膜処理
アルマイト処理はアルミに対して行うが、「陽極酸化皮膜処理」はマグネシウムに対して行う「マグホワイト」も含まれる。電解液中でアルミニウム、マグネシウムに電気を流して、耐食性酸化被膜をつけること。素材を意図的に酸化させ、被膜を形成する。通電して行うため、接点が必要で、その箇所には処理はのらない。
リフロー処理
錫(Sn)メッキ後にメッキ被膜を急熱急冷し、残留応力を除去する熱処理のこと。微小回路をショートさせる原因となる金属の微細な髭状の結晶(ホイスカ、ウイスカ)の抑制とために錫メッキとセットで多用される。当社ではリフロー処理の代用としてアニール処理を行うことが多い。
リューブライト(リン酸マンガン被膜処理)(化成処理)
金属表面をエッチングさせながら、リン酸被膜の結晶を形成させる化成処理。色調は光沢のない黒灰色で、塗装の下地処理として用いる。黒染めより防錆力が高い。鉄系の素材に対して行うことができる。
リン酸塩処理(化成処理)
鉄鋼材、マグネに対して行われる化成処理の一つ。リン酸塩溶液に浸漬させ、表面を皮膜で覆う。耐食、防錆、塗装下地を目的とする。パーカー処理とも呼ばれる。使用液により、外観は灰色から黒色、膜厚は1~20μm。リン酸塩処理には様々な種類があるが、最も一般的なものはリン酸亜鉛(PZ,パルボンド)処理。
3価クロム系化成処理
一般にクロメート処理と呼ばれるものは6価クロム系の化成処理を指すため、区分するために「3価クロム系化成処理」と呼ばれる。アルミに対して行われる「ベルスクード処理」が一般的。